ルーセットオオコウモリの飼育 情報収集ノート

整理・記録用です。ほぼ海外の資料で種や環境が異なるため、日本の飼育下繁殖の生体にはあてはまらない部分がある可能性があることにご注意ください。アイコンは母親が餌を食べている間一人でお留守番しているこどもです(かわいい)。

食事と栄養(Bats in Captivity Online, 1995)

出典

Barnard SM (1995), Chap.7 Feeding adult bats. in: Bats in Captivity Online

http://www.basicallybats.org/onlinebook/CONTENTS.htm

 

ざっくりまとめ

蛋白質は必要だが過剰なケースが多い(腎臓病のリスク)

・ビタミン(Cは不要)、ミネラル必要

・果物以外にも葉物野菜・花・オイルなど。柑橘類は与えないほうがいい(口内のトラブル)

・餌の量の目安は、体重の50~100%の重量、ただし小型種は多めが良い

 

感想

・柑橘類NGかどうかは資料によってさまざま。

・うちのもたまに紙丸めたやつ作ります、なんなんだろう

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果実食のコウモリの毎日の食事

 果実食のコウモリは、主に果汁と果肉の消化可能な部分を摂取する。彼らは、繊維や種子などの未消化成分を除去するために慎重に果物を扱う。

 果実食のコウモリは、成長のために他の動物と同様の栄養素を必要とするが、栄養素の必要量については知られていない。New World leaf-nosed bats (phyllostomatids)などように、フルーツコウモリの中には、タンパク質の必要量を昆虫の摂取により補う種もある。オオコウモリは、種にもよるが、昆虫を捕まえるエコーロケーション能力がないため、タンパク質の必要量を満たすためには膨大な量の果実(Horst and Skutt, 1994)を食べたり、花粉を摂取したり、果実や花や葉と一緒に昆虫を受動的に摂取したりしなければならない。残念なことに、飼育下のフルーツコウモリは、腎臓病を引き起こす可能性があるような蛋白質量が過剰な食事を与えられていることが常である。

 コウモリはビタミンCを合成することが示されておらず(Birney and Jenness, 1978; Jacobsen and du Plessis, 1976)、すなわち食事から摂取する必要があることになる。果物によって十分な量を得ることができ、追加することによって、アスコルビン酸代謝に起因する腎シュウ酸症を引き起こすリスクをもたらす。柑橘類は豊富なビタミンCを含むが、この酸は(何かしらの)口のトラブルを引き起こすリスクがあるため、フルーツコウモリには与えてはならない(Luckhoff, pers.com.;George, 1990)。フルーツコウモリがこれらの果物を好まないのはおそらくこの理由からだろう。

 果実や蜜を食べるコウモリが自然界でどのようにしてビタミンB12を獲得しているのかは、植物にはこの栄養素が含まれていないため不明である。昆虫を積極的または受動的に摂取したり、B12 産生微生物を含む淀んだ水を飲んだりして B12 を得ている可能性がある(Robbins et al., 1975; Tuttle, 1974)。

 適切な栄養素が含まれていることに加え、食事は口当たりがよく、行動刺激を提供できるものである必要がある。米国では、フルーツコウモリのための食事のほぼすべては、霊長類用のエサなどの市販の乾燥食品を含んでいる。このような製品をフルーツコウモリの食事に混ぜるのは便利ではあるが、これらの製品は天然の食品ではなく、心理的に刺激を与えるものではなく、雑食動物のために特別に作られたものである。表3に示されている食事は、そのような製品が含まれておらず、7年間に渡り、妊娠中や授乳中のインドオオコウモリ(Pteropus giganteus)のメスの健康を維持し、子の成長をサポートするのに十分な栄養を提供してきた。セバタンビヘラコウモリ(Carollia perspcillata)、ジャマイカフルーツコウモリ(Artibeus jamaicensis)とエジプシャンルーセットオオコウモリ(Rousettus aegyptiacus)の食事としても問題なく使用されている。

 表3 フルーツコウモリの食事(1000gあたり)

 ・ドライフルーツ 1~2種類(アプリコット、デーツ、イチジク、プルーン、レーズンなど)10~30g
 ・熟したバナナ(皮をむいたもの) 1~2本
 ・りんご 1/2~1個
 ・その他の果物(例:アプリコット、ブルーベリー、カンテループ、チェリーモイヤ、ブドウ、グアナバナ*、グアバ*、ハニーデュー、キウイ、マンゴー*、ネクタリン、パパイヤ*、桃、洋ナシ、プラム、スターフルーツラズベリークッパロング、イチゴ、トマトなど)2~3個
 ・みじん切りにした新鮮な葉物野菜やハーブ 1~2種類(例:バジル、キャベツ、コリアンダーコラード、ミント、マスタード、パセリ、ほうれん草、カブ、クレソンなど
 ・食用の花(あれば)5~10g
 ・ビタミン・ミネラルパウダー 小さじ1/8**
 ・蛋白質サプリメント(Pro Fuel™、LPP Regular™、脱脂粉乳、ビタミンA&D強化粉乳、漉したベビーミート、生卵、花粉 ※定期的にローテーションする) 小さじ1~1/2杯
 ・コレステロールフリーオイル(オリーブ、大豆など)小さじ1/2~1杯、週に1~2回

 * Goya®-brand juice約80mlで代用可。

 ** ビタミン/ミネラルパウダー(材料をよく混ぜて茶色の瓶に入れて保存する)。

  Bonemeal(Ca25%、P12%)45g
  ペット用マルチビタミンパウダー(例:Theralin®、Vionate®)45g
  ビタミンEパウダー(セレンを含まないもの、50 IU/g)10 g 

 一部のコウモリが他のコウモリよりも積極的にエサを食べ、果物を選んで食べることがよくあるため、ケージ内にエサを分散させ、すべての個体が適切な量を食べる機会を確保する必要がある。すべてのコウモリが同時に食べることができるように、ケージ内に複数のエサの容器を配置する。エサが糞や尿で汚染されるのを防ぐため、エサの容器はケージの床に置かないようにする。また、動物園などで見られるような大規模なコロニーを飼育する場合は、1日1回以上の給餌が必要になることもある。

 果物を比較的小さく切っておくと、複数のコウモリに均等に与えることができる。例えば、半分に切った果実をケージ内の木の枝に串刺しにしておくと、攻撃的な個体が好きな種類を独占してしまい、個体間で食生活の不平等を引き起こす可能性がある。種類にもよるが、果物を1/8インチ(3mm)から1インチ(25mm)までの大きさの立方体にカットし、餌の材料をよく混ぜ合わせることで、餌がコウモリの間でより均等に分配される。ただし、潰したり、練ったりしないことが重要である。果物の皮をむく必要はないが、皮に農薬が含まれている場合は洗い流す必要がある。

 大型翼手類の総食事量は、活動レベル、年齢、身体状態、環境ストレス要因に依存するが、1日あたり体重の50〜100%であることが望ましい(給餌ベース)。セバタンビヘラコウモリのような小型の果実食コウモリは、彼らが食べるであろうすべての餌を与えるべきである。

 果物には水分が豊富に含まれているとはいえ、水分は自由に摂取できるよう与えられるべきである。Pye (1967) は、乾燥した環境で飼育されていたり、水を十分に与えられていないコウモリには、皮膚の乾燥と潰瘍化が起こることを報告している。私が飼っているフルーツコウモリは水を飲むだけでなく、遊びにも水を取り入れている。週に数日、新聞紙を敷いたケージの底と水のあるケージの上部を行ったり来たりして、紙を噛んで丸めたものを作っている。なぜそれを作るのか、それで何をするのかはわからない。オーストラリアでは、フルーツコウモリがミネラルを補うために海水を飲もうとする行為が観察されている。フルーツコウモリが十分な微量元素を摂取できるようにするには、ケージにミネラルホイールを入れるとよい。