ルーセットオオコウモリの飼育 情報収集ノート

整理・記録用です。ほぼ海外の資料で種や環境が異なるため、日本の飼育下繁殖の生体にはあてはまらない部分がある可能性があることにご注意ください。アイコンは母親が餌を食べている間一人でお留守番しているこどもです(かわいい)。

食事と栄養(GLs for the Captive Management of FFs, 2011)

出典

South Australian Government (2011), Guidelines for the Captive Management of Flying Foxes in South Australia.

http://www.environment.sa.gov.au/files/44c27248-d5d3-4a1c-8360-9fc000faae9b/pa-gen-flyingfoxguidelines.pdf

 

ざっくりまとめ

・必要栄養量の指標は1995から変わりなし

・硬い果物2/3、柔らかい果物1/3 →顎の筋肉・歯の健康

・繊維質を摂取させすぎないように注意、特に子供は腸疾患のリスクあり

・蛋白の添加、塩・ミネラルの投与

 

感想

・「食べ物を奪うのはオオコウモリによくみられる行為」目の前にエサ入れあるのに他人が食べてたりお腹にキープしてるの奪うんですよ…(子ども相手でも容赦ない)

・日本の個体はバナナには適応しているのではという気がする。コーン缶は非常食によさそう

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4.13 食事と給餌
 オオコウモリは一般的に果実食のコウモリとして知られているが、彼らの好物は、実際には花粉とユーカリの花の蜜であり、それから他の広葉樹の花(メラルーカ、バンクシア、リリーピリー、イチジクなど)、熱帯雨林の果物と続く。一般的に外来種の果物は好まないが、在来種の食料源が不足していることから、オオコウモリはやむを得ず果樹園や住宅の庭に植えられた果物の木を利用している。ニューサウスウェールズ州のGray-Headed FlyingFoxが利用するエサのリストについては、付録1を参照されたい。季節ごとに餌が変わり、また広範囲に渡っているため、オオコウモリは居住地を移動することで季節の変化に適応し、餌を求めて長距離を移動することができる。事実上、野生のオオコウモリが一晩で摂取するであろう花蜜、花粉や果物の野生の食事を再現することは不可能である。

 オオコウモリは、果物を噛んで栄養素を抽出し、果汁を飲み込み、繊維を吐き出すような食べ方をする。オオコウモリの消化器系は、繊維に対応できないため、均質化された、ピューレ状の果物は避けるべきである。フライングフォックスの正確な必要栄養量は不明のままだが、アメリカ動物園協会のコウモリ分類群アドバイザリーグループは、次の要件を提案している。

1日の目標栄養量(乾物含量)
 粗蛋白質 (%)       2.0 - 15.0
 脂肪(%)       5.0 - 9.0
 ビタミンA(IU/g)   4.0 - 14.0
 ビタミンD2・D3 (IU/g) 0.2 - 2.0
 ビタミンE (mg/kg)   11.0 - 56.0
 カルシウム (%)     0.5 - 1.0
 リン (%)        0.4 - 0.9

 各ケージには、エサをめぐる争いを最小限に抑えるために、複数の餌入れ(理想的には1匹につき1つ)を適切に配置しなければならない。エサ入れは、オオコウモリが容易に届く場所に設置する必要がある。

 オオコウモリは暑い時期にはすぐに脱水症状になるため、水は常にケージ内の2か所以上の場所で利用できるようにする必要がある。水皿を使用する場合はケージ内の高い位置に設置するが、オオコウモリは、多くの場合、食事の間に水を飲むためすぐに水はエサで汚れてしまう。げっ歯類用のウォータードリッパーを、ディスペンサーの先端のみをケージ内に差し込むようにしてケージの外に配置することができる。これにより、水を清潔で新鮮な状態に保つことができ、同時に水の補充や清掃を素早く簡単に行うことができる。ウォータードリッパーに不具合がないか定期的に確認する必要がある。

 

4.14 成体の食事 
 平均的なサイズの成体のオオコウモリには、一日あたり約350グラムの刻んだ果物(+サプリメント)を与える必要があり、毎日体重の25〜35%の果物を消費する。少なくとも3種類の果物を与え、食事の約2/3はリンゴや梨などの硬い果物(歯を清潔に保ち、顎の筋肉を鍛える)、残りの1/3はロックメロン、ポポー、ブドウ、メロン、イチジク、マンゴーなどの旬の柔らかい果物で構成するようにする。

 大きめの果物片を運ぶことができる個体もおり、エサを持って食事用の場所へと飛ぶ。食べ物を奪うのはオオコウモリによくみられる行為であり、より安全な場所で食べるために自分の口に食べ物を詰め込んでから飛んで移動することがある。果物は無駄を最小限に抑えるために一口サイズに刻む必要がある。

 バナナは繊維質が多いため控えめに与える必要がある。あまり一般的ではないが、オオコウモリの中には柑橘系の果物が好きなものもおり、缶詰のコーンなどの甘みのある野菜と一緒にみかんやオレンジを時々追加してもよい。

 栄養補助食品を追加する場合は、刻んだ果物に混ぜこむ。Wombarooでは、果物や蜜を食べる動物の必要蛋白質量を満たす「高たんぱくサプリメント」を製造している。Wombarooが入手できない場合は、Complanなどの他の製品を使用することができます。

 その他にも、次のようなサプリメントを加えることができる:グルコサミン、コンドロイチン、ビタミンCパウダー、Sandozカルシウム・シロップ 、VetaFarm Blossom Nectar

 さらなる食事の必要補助食品として、舐めるための塩の塊やミネラルが利用できるようにしておかなければならない。

 

4.15 幼体の食事

 メスのオオコウモリは、子が生後5〜6月齢の頃までは授乳を続けているが、子は死後4月齢の頃には食料を求めてコロニーと一緒に外へと飛ぶことができるようになる。

 オオコウモリの子は、蛋白質やビタミンの必要量を満たすためにミルクを摂取するが、活動的になるとその分のエネルギー(炭水化物)を必要とする。食事に果物を含めていくことで、食事の要件を満たすとともに、保護下にあった動物が自然に戻された後生きていくために必要となる食事のスキルを教えることになる。

  飼育下では、母親コウモリに育てられた子は生後6~7週齢で母親のエサから果汁を舐め始め、生後7~8週齢で母親が食べている果物のかけらを食べ、生後10~12週齢までには成体と同じサイズの果物を食べることができるようになる。

 子コウモリの便秘や脱腸などの腸の問題は、食事における繊維過剰と関連があることが示されている。果物をエサに含めていく場合、果汁(果肉)のみを抽出し、繊維を捨てる(吐き出す)ことができる状態にしておかなければならない。